ビジネス情報掲載記事(令和7年11月1日号)-お知らせ
備後の経済情報誌「ビジネス情報 令和7年11月1日号」に載りました。

(本文)
「リーダー選択の落とし穴」
私たちの人生の中で「良きリーダー」を得て生きることは、とても幸せなことです。
しかし、リーダーであっても従うべき師匠をもつべきです。
「俺は師はいらない」と決めてしまうと、その方の成長はそこで停止してしまいます。
永い人生の中で、ほんの少々うまくいっただけで「俺は神」「俺は殿様」と勘違いすると、残りの人生は無成長の時代になってしまいます。
立派な成功者は、成功しても自分を導いてくれた師への感謝を忘れません。
残念な方は、「全部自分がやったことだ」と強調します。
人の成果を盗んででも、自分の手柄にします。
さて、私は少し易経を勉強していますので、その話をします。
易経のなかで、全64卦のうち17番目の卦に「沢雷随」(たくらいずい)があります。
立派な人に徹底的に従うことで、充実した生き方ができるという意味です。
その際、リーダーに従う条件として、「人」と「時」を選ぶことが挙げられています。
選び従うリーダーという「人」の心が純粋で正しき場合に、従う人も成功すると言われています。
正しい人に従えば立派な人材となり、そうでない人に従えば不正の人になるのです。つまりリーダーを選ぶのは不正のリスクの有無で見分ければよいということです。
次に「時」について話します。
人は時間と共に変化します。
最初は美しい言葉、魅力ある言葉を口にしていても、「時」を経ることにより変化していきます。
最初からだますつもりか、途中で心変わりするかは分かりません。
「時」の変化の中で一貫性がなければ「不正」となります。
「時」の変化の中で、一貫性がなければ「不正」につながります。
選んだ私がバカなのか、だまされた私がバカなのか、当初の目的が果たされないと、「不正のリーダー」についたことになります。
結論から言えば、従うリーダーを選ぶのは自分の責任になります。
不正の師につけば、不正の弟子になります。
「沢雷随」について漢字の意味を基に説明しますと、沢は悦びを表し、雷は活発な動きを意味します。
国のリーダーが活発に動き回って、国民を悦ばせれば、国民は自ずとリーダーに付き従うという意味です。
そして、従うリーダーを選ぶには不正のリスクがあるかどうかを見極める必要があるのです。
約束違反をする人は、不正の人になります。
もう一つ付け加えると、嘘を言う従業員のリーダー、つまり社長は嘘をつく人とも言えます。
従業員を悦ばせ、付き従えさせても動機が不純で、不正があれば、もはや「沢雷随」の卦は凶となります。
「元い(おおい)に、亨りて(とおりて)、貞しき(ただしき)に利ろし(よろし)」とは「随卦」の卦辞(かじ)、つまり卦全体の徳・方針を示す言葉です。
元い(おおい)にとは、動機が純粋であることです。
亨りて(とおりて)とは、うまく前進することです。
貞しき(ただしき)とは、正しいことです。
利ろし(よろし)とは、成功する、利益があるということです。
多くの人は楽しいこと、快楽に盲目的に従うことがあります。
流行があるのも、多くの人が従っているから起きる現象なのです。
盲従することにより、自分の人生を棒に振ることは珍しくありません。
よって、そのリーダーに従うかどうかは最低限、不正のリーダーかどうかを見極めることが大事です。
稲盛和夫さん(故人)は、現在のauを創業するときに、自問自答されています。
「動機善なりや、私心なかりしか」と。
時を経ても動機が善で私心がなければ、きっと成功を手にすることができるでしょう。

